俺様王子が恋をした
それからしばらくして

「まゆ?」

先輩が戻ってきた。

「おかえりなさい。」

「悪い、こんな遅くなると思ってなくて。」

眉毛を下げて謝る先輩に

「大丈夫です!桜井先輩から
 話、聞きましたから!」

そう告げると

『あいつ余計な事を…』
小さく呟いた言葉は私の耳にも届いた。

「先輩、ただの優しさなら嫉妬しますけど
 今日みたいな優しさはかっこいいと思います。」

誰もいない教室をいいことに
先輩の腰に腕を回して抱き着いた。

「……好き。」

静かな放課後の夕日が入り込む教室の中に
私の声が響いた。
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