極上CEOの真剣求愛~社長の言いなりにはなりません~
スラックスのファスナーを下ろしているのだろう。
ジッと、小さな音が聞こえた。
シャツの裾を中にしまう、ゴソゴソという衣擦れの音が、私の耳をくすぐる。
ああ……もうっ!
この人はなんで、いつもいつもいつも……!!
背後で着替えている彼を意識しないようにしようとすると、却って耳が音を拾ってしまう。
それでも私は口の中で『無、無、無……』と唱えながら、とりあえずスーハーと深呼吸を繰り返した。
そうしているうちに、音がやんだことに気付き、視線をそおっと窓ガラスに戻す。
そこに映る彼は、ベルトをきちんと締め終わっていて、シャツの襟を立て、ネクタイを首にかけている。
とりあえず、着替えが終わったのを確認してホッとしながら、私は身体ごと彼に向き直った。
一度こほんと咳払いをして気を取り直す。
「その後、午後七時から、清家(せいけ)さんと会食のお約束が……」
本日最後のスケジュールを口上する私を、ボスは最後まで言わせずに遮った。
「悪い。最後のキャンセル」
「えっ!?」
ひっくり返った声をあげた私を、彼がちらりと見遣る。
「週明けからまともに家に帰ってなくて、疲れてるんだ。清家のならいつにでも変更できるだろ」
すぐに自分の喉元に目を伏せ、慣れた手つきでネクタイを結ぶ。
ジッと、小さな音が聞こえた。
シャツの裾を中にしまう、ゴソゴソという衣擦れの音が、私の耳をくすぐる。
ああ……もうっ!
この人はなんで、いつもいつもいつも……!!
背後で着替えている彼を意識しないようにしようとすると、却って耳が音を拾ってしまう。
それでも私は口の中で『無、無、無……』と唱えながら、とりあえずスーハーと深呼吸を繰り返した。
そうしているうちに、音がやんだことに気付き、視線をそおっと窓ガラスに戻す。
そこに映る彼は、ベルトをきちんと締め終わっていて、シャツの襟を立て、ネクタイを首にかけている。
とりあえず、着替えが終わったのを確認してホッとしながら、私は身体ごと彼に向き直った。
一度こほんと咳払いをして気を取り直す。
「その後、午後七時から、清家(せいけ)さんと会食のお約束が……」
本日最後のスケジュールを口上する私を、ボスは最後まで言わせずに遮った。
「悪い。最後のキャンセル」
「えっ!?」
ひっくり返った声をあげた私を、彼がちらりと見遣る。
「週明けからまともに家に帰ってなくて、疲れてるんだ。清家のならいつにでも変更できるだろ」
すぐに自分の喉元に目を伏せ、慣れた手つきでネクタイを結ぶ。