極上CEOの真剣求愛~社長の言いなりにはなりません~
私はその涼しい横顔に、「いえ、ですが」と声をかけた。


「清家さんは、COOです」

「俺はCEOだ。なにを気遣う必要がある?」


再び探るような視線を投げられ、私は「うっ」と口ごもった。
そう……今の今、私の目の前で着替えていたこの長身の男性は、まだ三十三歳という若さで、私が勤務するこの『SKトレーディング・コーポレーション』の最高経営責任者……いわゆるCEOの職位に就いているトップだ。
名を、神楽錦(かぐらにしき)と言う。


ここは、世界でも有数の金融グループの一角を担う、為替取引特化型の金融投資会社。
まだ規模は小さいながらも、着実に業績を伸ばし、創立以来、毎期黒字決算を計上。
三年前東証一部上場を果たし、グループ内でも確固たる地位を築き上げた。
神楽さんと現COO……最高執行責任者の清家温人(はると)さんが、大学生の時に共同で起業した会社だ。


二人は、高校時代からの親友だそうだ。
この会社の中で、清家さんとの約束を、個人的理由でドタキャンできるのは神楽さんくらいなもの。
そして、その逆も多々ある。


「わ、わかりました。それでは、清家さんの秘書の中川さんに、そのようにご連絡し、謝罪します」


私は溜め息をつきたくなるのを堪えながら、手帳をパタンと閉じ、そう答えた。
それには、「よろしく」と軽い口調で返される。
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