僕は雲になりたい
遠足
「そのうち私の事好きにさせてあげる」
そう宣言されてから、2ヶ月が経ち、夏が近づいて来る頃、3年生は学校の行事で遠足があった。場所は東京のテーマパーク。3年生全体での遠足だが、基本的には自由行動。朝現地集合して、夕方に現地解散する。そのまま夜までテーマパークにいるのもよし、帰るのもよし、毎年かなり自由な遠足だった。
僕はというと、この2ヶ月間、彼女からのデートの誘いを断り続けていたり、クラスで話しかけられても無視したりと、それなりに大変な日々を過ごしていた。
だからもちろんこの遠足は、普段学校から一緒に下校する数人の男子達とテーマパークを回る事を決めていた。だが、人生というのは、時に自分の思惑とは真逆の方向に行ってしまうことがある。
「それが人生だ」と言う人もいるだろう。確かにその通りだと僕も思う。自分の思い通りの人生を過ごしている人などこの世の中に何人いるだろうか。そして思い通りの人生が成功だと思える人が何人いるだろうか。例え自分の思い通りの人生でも世間から見れば失敗だと思われているかもしれない。そう考えると、本当の意味で、自分の人生が思い通りに行っている人はいないのかもしれない。僕にとって、「それが人生だ」。
遠足の前日、3年生は浮き足立っていた。これは学生特有だろう。行事の前日は、よくある事だ。学校の休みの日に友達と出掛けるのとは訳が違う。平日、学校がある日に友達と出掛けられるのだ。浮き足立つのは当然とも言える。他にも体育祭や、文化祭、修学旅行など行事があるが、前日はやはり楽しい。むしろ前日が一番楽しいのかもしれない。これは学校の行事以外にも言える事ではないのだろうか。まぁ、それは人それぞれだろう。
放課後僕は廊下で呼び止められた。
「おーい柴田ー!」
無視を決め込もう。聞こえないフリだ。
「柴田ー!おーい!柴田!」
なんて大きい声を出すのだろうか。そんなに大きい声を出して、恥ずかしくないのか。
「何?」
僕は返事をして振り向く。もちろん振り向いた先には彼女がいた。
「明日一緒に回るでしょ?」
満面の笑みで、さも当然かのように聞いて来た。やはり彼女は少々変わっている。何故好きでもない人と一緒にテーマパークを回らなければならないのだろうか。やはりちょっと可愛い。
「嫌だよ。なんで俺がお前と一緒に回らなきゃならないんだよ」
嫌悪感丸出しだ。
「付き合ってるんだからいいじゃん?」
この2ヶ月間、彼女は毎日のように同じ事を言うが、決して恋人ではない。
「だから、付き合わないって言ってるじゃん」
「大丈夫だよ」
「いや、何がだよ」
「そーゆー時もあるよ」
「は?」
「倦怠期ってやつだね」
彼女はニコニコしている。可愛い、可愛いのだが、おかしなことを言っている事には違いない。付き合ってもない男女に倦怠期という言葉など当てはまらない。
「いや、あの、倦怠期ってさ、恋人同士でもたまにさ、こう嫌になったりとか、ちょっと喧嘩が多かったりみたいな事でしょ?」
「まさに今の私達だね」
語尾に音符がつくように彼女は言うが、訳が分からない。
「だから恋人じゃないじゃん俺達」
ため息をついた。変わっている人と話すのは疲れる。
「あ、そっかそっか。なるほどね」
彼女は何か分かったようだ。良かった。やっと分かったくれたみたいだ。
「うんだから、もう、、」
「キスも何もしてないもんね!そりゃ不満がたまるわけだ!」
、、、は?
「いや、は?聞いてなかった?」
「そうだったんだね。不満が溜まってたんだね。ごめんね、気づかなくて。危うく浮気されるところだったよ」
「浮気も何も付き合ってねーって、あと何回言えばいい?」
「楽しみだね明日」
「聞こえてる?てか、聞いてる?」
「お洒落してきなよ」
「おーい聞いてるかー」
「じゃ、私今日早く帰って早く寝るからまたね」
彼女はそう言うと、颯爽と立ち去って行った。こんな身勝手な人がかつていただろうか。呆れてものも言えない。僕も諦めて帰宅することにした。
そう宣言されてから、2ヶ月が経ち、夏が近づいて来る頃、3年生は学校の行事で遠足があった。場所は東京のテーマパーク。3年生全体での遠足だが、基本的には自由行動。朝現地集合して、夕方に現地解散する。そのまま夜までテーマパークにいるのもよし、帰るのもよし、毎年かなり自由な遠足だった。
僕はというと、この2ヶ月間、彼女からのデートの誘いを断り続けていたり、クラスで話しかけられても無視したりと、それなりに大変な日々を過ごしていた。
だからもちろんこの遠足は、普段学校から一緒に下校する数人の男子達とテーマパークを回る事を決めていた。だが、人生というのは、時に自分の思惑とは真逆の方向に行ってしまうことがある。
「それが人生だ」と言う人もいるだろう。確かにその通りだと僕も思う。自分の思い通りの人生を過ごしている人などこの世の中に何人いるだろうか。そして思い通りの人生が成功だと思える人が何人いるだろうか。例え自分の思い通りの人生でも世間から見れば失敗だと思われているかもしれない。そう考えると、本当の意味で、自分の人生が思い通りに行っている人はいないのかもしれない。僕にとって、「それが人生だ」。
遠足の前日、3年生は浮き足立っていた。これは学生特有だろう。行事の前日は、よくある事だ。学校の休みの日に友達と出掛けるのとは訳が違う。平日、学校がある日に友達と出掛けられるのだ。浮き足立つのは当然とも言える。他にも体育祭や、文化祭、修学旅行など行事があるが、前日はやはり楽しい。むしろ前日が一番楽しいのかもしれない。これは学校の行事以外にも言える事ではないのだろうか。まぁ、それは人それぞれだろう。
放課後僕は廊下で呼び止められた。
「おーい柴田ー!」
無視を決め込もう。聞こえないフリだ。
「柴田ー!おーい!柴田!」
なんて大きい声を出すのだろうか。そんなに大きい声を出して、恥ずかしくないのか。
「何?」
僕は返事をして振り向く。もちろん振り向いた先には彼女がいた。
「明日一緒に回るでしょ?」
満面の笑みで、さも当然かのように聞いて来た。やはり彼女は少々変わっている。何故好きでもない人と一緒にテーマパークを回らなければならないのだろうか。やはりちょっと可愛い。
「嫌だよ。なんで俺がお前と一緒に回らなきゃならないんだよ」
嫌悪感丸出しだ。
「付き合ってるんだからいいじゃん?」
この2ヶ月間、彼女は毎日のように同じ事を言うが、決して恋人ではない。
「だから、付き合わないって言ってるじゃん」
「大丈夫だよ」
「いや、何がだよ」
「そーゆー時もあるよ」
「は?」
「倦怠期ってやつだね」
彼女はニコニコしている。可愛い、可愛いのだが、おかしなことを言っている事には違いない。付き合ってもない男女に倦怠期という言葉など当てはまらない。
「いや、あの、倦怠期ってさ、恋人同士でもたまにさ、こう嫌になったりとか、ちょっと喧嘩が多かったりみたいな事でしょ?」
「まさに今の私達だね」
語尾に音符がつくように彼女は言うが、訳が分からない。
「だから恋人じゃないじゃん俺達」
ため息をついた。変わっている人と話すのは疲れる。
「あ、そっかそっか。なるほどね」
彼女は何か分かったようだ。良かった。やっと分かったくれたみたいだ。
「うんだから、もう、、」
「キスも何もしてないもんね!そりゃ不満がたまるわけだ!」
、、、は?
「いや、は?聞いてなかった?」
「そうだったんだね。不満が溜まってたんだね。ごめんね、気づかなくて。危うく浮気されるところだったよ」
「浮気も何も付き合ってねーって、あと何回言えばいい?」
「楽しみだね明日」
「聞こえてる?てか、聞いてる?」
「お洒落してきなよ」
「おーい聞いてるかー」
「じゃ、私今日早く帰って早く寝るからまたね」
彼女はそう言うと、颯爽と立ち去って行った。こんな身勝手な人がかつていただろうか。呆れてものも言えない。僕も諦めて帰宅することにした。