【BL】祭囃子
「あっつ……でもおしひぃ!」
「食いながら喋るなよ。噛むぞ。」
たこ焼きを頬張って壱はすっかり上機嫌だ。
「あ!りんご飴!悟、りんご飴!」
「はいはい。慌てなくても逃げないっての。」
子供のような素振りに半分呆れつつも、可愛くも思えてしまう。
たこ焼きを食べ終えてから、りんご飴を一つずつ買って、また歩き出す。
ふと、金魚すくいが目についた。
「……壱、食い物じゃなくて、ああ言うものは楽しまなくていいのか?」
思い返せば過去も今も壱が欲しがるのは食べ物ばかりで、金魚すくいやヨーヨーすくい、射的なんてものもやりたがらない。
「うん、いいんだ。思い出は持ち帰らないって決めてるから。」
そう言って手元のりんご飴へと落とした視線は、寂しそうに見えた。
「でも、少しぐらい……いいかな?」
それはとても小さな呟きで思わず聞き返しそうになったけれど、その前に壱が視線を上げて指を差した。
「ーーあれ、欲しい。」
その先にあったのは、お面の屋台。
「お面?あんなのが欲しいのか?」
「うん、ダメ?」
「ダメじゃないけど………分かった。どれがいい?買ってやる。」
「え……でも、それは…」
「いいから、選べよ。」
「う、うん………じゃあ、これ」
壱が選んだのは無難な狐のお面だった。
屋台のおじさんにお代を払って、お面を壱の頭の横に着けてやる。
「ふっ、以外と似合ってんな。」
「ほんと?じゃあこれ、ずっと着けてよ。」
「馬鹿、さすがにここだけにしとけよ。」
「分かってるよ、冗談だって。」