Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「誰がどんなふうに言ったとしても、千紗子は可愛いよ。俺には千紗子のどんな顔もどんな台詞も、すべてが魅力的に映るんだ。」
その言葉に千紗子の胸が締め付けられる。
雨宮から目を逸らしている千紗子には、彼が今どんな表情をしているのか見えないけれど、その声は穏やかで優しく、そして切なげな声色を隠そうともしていない。
(どうしてそんなことを言うの……)
ギュッと固く瞳を閉じて、彼の甘い雰囲気から逃れようとするけれど、このベッドルームの持ち主は雨宮で、千紗子は今その彼と二人っきりなのだ。当たり前だけれど、目の前の彼から逃れることはできない。
(私は、雨宮さんの気持ちに応えることなんて考えられない……)
雨宮から顔を逸らしてたまま、千紗子は何も言うことが出来なくなる。
少しの間、気まずい静寂がベッドルームに満ちていた。
突然千紗子の頭に大きな手が置かれた。
「ごめんな。千紗子を困らせるつもりじゃなかった。」
柔らかな声と共に、頭の上の手が遠慮気味に千紗子を撫でる。
「もう寝よう。明日は日曜日だからきっと忙しい。」
あやすような口調でそう言いながら、千紗子の頭の上でポンっと軽く跳ねた後、雨宮の手が離れて行った。
その時なぜか、千紗子はその温もりを追いかけたい気持ちが一瞬だけ湧き上がったけれど、これからまた彼と同じベッドで寝るのだという緊張感の方が上回って、一瞬生まれたその感情を深追いすることはなかった。