Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
(結局全部準備してもらってしまったわ……)
あの後ロールキャベツを運んできた雨宮が、飲み物を取りにもう一度キッチンに入ろうとしたため、千紗子は『今度こそは』と立ち上がりかけたが、またしても雨宮に素早く制されて、結局キッチンに入ることは叶わなかったのだ。
自分で作ったロールキャベツを口の中で咀嚼して飲みこむ。水の入ったグラスを持ち上げながら、千紗子は何となくいつもの食事よりも美味しく感じることに気が付いた。
(自分が作ったものでも、こうして誰かがよそってくれただけで、いつもよりも格段美味しく感じるのね…)
自分で作って自分で盛り付けて自分で食べる。
いつものルーティンワークの途中過程が変わっただけなのに、驚くほど食事の感じ方が違うことに千紗子は心の中で感嘆していた。
ここ数日は精神的な落ち込みのせいで、食事があまり美味しく感じられずに量も食べられなかったけれど、こうして『美味しい』と感じることが出来るようになったということは、心の傷も少しは回復しているということだろう。
(やっぱり今が引き揚げ時なのよ。)
自分の取った行動が間違いではなかったと、千紗子は心を固めた。