Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
7. 聞こえる声と見えない心
休み明けの火曜日。重い気持ちを抱えたまま、足を引きずるように出勤した千紗子は、雨宮が出張で居ないことを知って拍子抜けした。
『どんな顔をして彼と顔を合わせればいいのか。』
『逃げ出したことを責められたら、なんて言おう。』
そんなことばかりを考えてしまう休日は、あっという間に過ぎ、今日も朝からぐるぐると同じようなことばかり考えながらここに来たのだ。
「千紗ちゃん、おはよう。」
「おはようございます、美香さん。」
「あら、顔色があまり良くないわよ?大丈夫?」
カウンター内に入ると、早番で来ていた美香が千紗子の変化にめざとく気付く。
「大丈夫です。」
さらっと返事をして、これ以上追及されないように、何事も無いふりを装って業務に取り掛かる。
昨日からずっと抱いていた緊張感が緩んだ千紗子は、足元の力が抜けるような気がしたけれど、仕事に集中することでなんとか乗り切ろうとしていた。