Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
次の日も千紗子はその嫌な視線を何度も感じることになる。
背中に何かを感じて振り向く。けれど、周りには誰もおらずに業務に戻る。
そんなことが何度かあった後、千紗子はさすがに自分の気のせいではないのかもしれない、と思うようになっていた。
だけど何の確証もなく、誰かに訴えることも出来ない。
実際何の被害も受けておらず、ただ何度も強い視線を感じて気味が悪いからと、同僚や上司を巻き込んで騒ぎを起こしたくはなかった。
そんな午前中を終えて、やっと昼休憩になって千紗子は休憩室に入ることで強張っていた体をやっと緩めることが出来た。
「どうしたの?千紗ちゃん顔色が良くないわよ?」
あとから休憩に入って来た美香が、千紗子の様子に気付く。
「お昼ご飯、全然減ってないみたいだけど、具合でも悪いの?」
「いえ、そう言うわけではないのですが……」
コンビニのおにぎりが千紗子の前に手つかずのまま置かれている。
「千紗ちゃんにしては、珍しくコンビニのご飯が続いてるみたいだし、何かあったのなら遠慮なく相談してよ?私に出来ることは少ないけど、話すだけでもきっと楽になると思うわよ。」
裏表のない美香の言葉が、千紗子の胸にストレートに届く。
「美香さん……」
千紗子は残り少なくなった休憩時間いっぱいを使って、昨日から気になっている視線のことを話した。