Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「千紗子っ!!」
背中から聞こえた声に、千紗子の体が震える。
振り返ると同時にきつく抱きすくめられた。
千紗子をすっぽりと覆うその人からは、いつもと同じ甘く爽やかな香りがして、千紗子の胸が切なく震える。瞼がじわりと熱くなった。
「こんなに濡れてっ、何かあったのか?またあの彼に何か言われた??」
焦った声で立て続けに問いながら、彼は千紗子の濡れた頭を、露を払うように手で拭っていく。
抱きしめた腕から千紗子の服がしっとりと濡れていることに気付いたのか、千紗子に自分が差していた傘を握らせると、突然着ているダウンジャケットを脱ぎ始める。そして、持たされた傘を手に呆然と立ちすくむ千紗子の肩に、それをさっと羽織らせた。
「あ、雨宮さん!?」
千紗子は驚いた。
十二月も半分を過ぎ、夜は上着なしでは寒すぎる。しかも降ってくる雨は、素肌に当たれば痛いくらいの冷たさなのだ。
「風邪引いてしまいますっ!」
焦って上着を脱ごうとする千紗子の手を、大きな手が掴んだ。