Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「風邪を引くのはどっちだ…いいから、着てろ。」
唸るような低い声でそう言った雨宮は、ファーの付いたフードを千紗子の頭の上に被せると、千紗子の手を取って歩き出した。
「あ、雨宮さんっ!?」
雨宮は千紗子の呼びかけに答えることもせずに、前を向いたまま彼女の手を引いて歩き続ける。
千紗子に傘を持たせたままで自分は上着すら着ていないのに、雨宮は濡れることを気にも留めない様子だ。
「雨宮さんっ!」
これ以上濡れたら今度は彼が熱を出してしまうかも、と千紗子は背伸びをしながら彼に傘をさしかける。自分は雨宮のジャケットで守られているから雨に濡れる感じはしなかった。
千紗子のそんな様子に雨宮が気付いていないはずはないのに、彼は千紗子の方を見ようともせず、足早に歩いていく。