Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 そうやって数分歩いているうちに、千紗子は気付いた。雨宮がどこに向かっているのか、そしてここがどこなのかを。

 道の先には、ここ数日ですっかり馴染みになったコンビニがぼんやりと光っている。

 (雨宮さんはきっとこの道を通って自分のマンションに私を連れて行くつもりなんだ……)

 そう思いながら見つめる背中が随分と濡れている。

 (雨宮さんのマンションまで、まだ五分くらいあるわ……このままだと彼が風邪を引いてしまう……)

 千紗子は意を決して口を開いた。

 「雨宮さん。」

 呼びかけるけれど、彼からの返事はなく、振り向きもしない。

 怒っているのかもしれないし、その理由にも心当たりがある。

 (雨宮さんがもし私のことを嫌いになったとしても、今は風邪を引かせるわけにはいかないわ。)

 千紗子はさっきより大きな声で彼を呼んだ。
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