Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
半ば強引に雨宮を自宅に連れ帰った千紗子は、玄関から中に入ると同時に彼をバスルームへと押し込んだ。
ものの五分の間にすっかりずぶ濡れになってしまった雨宮を、一刻も早く温めなければ、ということしか考えられなかったのだ。
「タオル、使ってください。」
部屋の中のクロゼットの中からバスタオルとフェイスタオルを何枚か掴んでバスルームに戻ると、雨宮がシャツのボタンに手を掛けているところだった。
千紗子は慌ててタオルだけを置いてバスルームから出た。
千紗子は濡れてしまった雨宮のジャケットや自分のコートをハンガーにかけ、エアコンの風が当たりそうな場所に引っかける。
そうしながら、あることが千紗子の頭をよぎった。
(どうしよう…雨宮さんが着替えるものがないわっ!!)
当たり前だがここは千紗子の一人暮らしの部屋だ。
まだ引っ越して数日で、最低限のもので暮らし始めた為、雨宮に貸せそうなものは何もない。
(とりあえず、なんとかしなきゃ!)
千紗子はさっき置いたばかりの鞄を掴んで、慌てて玄関から飛び出したのだった。