Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 「あの、これ。…良かったら……」

 手に持っている袋のうちの一つを雨宮に手渡すと、千紗子は急いで靴を脱ぎ部屋へ上がる。クロゼットから手早く着替えを取り出して、バスルームへと逃げ込むように飛び込んだ。

 閉めたドアを背に、「ふぅ~~~っ」と長い息をつく。
 緊張と共に体の力も抜けていく。そのまましゃがみ込みそうになった時。

 「着替え、ありがとう。」

 ドア越しに雨宮の声が聞こえた。

 ドアの向こうから、伝わるはずのない熱を感じる。
 見えないはずの彼の顔が見えた気がした。

 「いえ……」

 それだけ呟いた千紗子は、湿った服を捨てるように脱いで、浴室へと飛び込んだ。


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