Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
どくん、どくん……
白い布一枚越しに雨宮の鼓動が耳に伝わってくる。
「千紗子……。」
千紗子を抱きしめる腕に力を込めた雨宮は、狂おしいほど切なく甘い声でその名を呼んだ。
身じろぎできないほどきつく抱きすくめられているのに、体よりも心のほうが苦しくて、千紗子は無性に声を上げて泣きたくなってしまう。
しばらく無言で千紗子を抱きしめていた雨宮が、突然腕を解き、その腕で千紗子の体を自分から引き離した。
温もりから突然切り離された千紗子は、ハッとなった。
「こんなふうに君を困らせてしまって、すまない……」
そう言う雨宮の表情が曇っている。
なぜ雨宮がそんなことを言い出したのか、千紗子には全く分からない。『困らせている』というなら、それは自分の方なのに。
眉を潜める千紗子に雨宮は言葉を続ける。
「俺と二人っきりでいることが分かったら、彼が怒るんじゃないのか?」