Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 千紗子は、両目をこれ以上ないくらい大きく見開いた。

 「彼が本当に改心して千紗子がそれを許したのなら、俺にはもう口を出すことはない……。」

 そう言うと雨宮は、辛そうに眉間にしわを寄せて千紗子から目線を逸らす。
 千紗子の頭の中は真っ白になり、体が小刻みに震え出した。大きな瞳のふちには、じわじわと水が溜まっていく。

 そして彼が次に発した言葉に、千紗子の中で何かが爆ぜた。

 「千紗子が彼を選ぶのなら……俺は、」

 「ちがうっ!!!」

 悲鳴のような声が千紗子の口から飛び出す。

 「どうして?…どうしてそんなこと、言うの……?」

 「千紗子…?」

 「私がいつ、裕也を許したの?……いつ彼を選んだの?」
 
 「千紗子……」

 わなわなと震える口から出る言葉は震えている。
 両目に溜まっていく涙は今にもこぼれ落ちそうだったけれど、千紗子はぐっとお腹に力を込めて、ありったけの気持ちを振り絞って言葉を続けた。
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