Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 「………するって、言ったじゃない……」

 「千紗子?」

 「『好きな人が幸せじゃなかったら、全力で奪って、そして俺が幸せにする』って言ったじゃない!!……あれは嘘、だったんですか…?」

 言い終わると、千紗子の瞳から堰を切ったように涙が溢れだした。
 大粒の涙がぽろぽろと次々に落ちていく。

 こぼれ落ちる涙を拭いもしないで自分を見つめる千紗子に、雨宮は瞠目した。

 「それとも、もう…私のことなんて、嫌いに、なりましたか……?」

 しゃくりあげながら、切れ切れに千紗子が続けた言葉に、雨宮はカッとなった。

 「そんなわけないだろっ!!」

 千紗子の肩がびくりと大きく跳ね上がる。初めて聞く雨宮の怒声に、千紗子の涙は勢いを増した。
 けれどその涙はすぐに白いシャツの上に吸い込まれることになった。

 「すまない…大きな声を出して。でも、俺は千紗子を嫌いになったりなんてしない。」

 千紗子はその声を雨宮の腕の中で聞いていた。
 少しかすれ気味の低い声が耳に届くだけで、千紗子の胸は静かに震える。
 
 「俺が君を嫌いになる日なんて、きっと一生来ないだろう。千紗子、君をずっと愛してる。たとえ君が俺のことを好きじゃなくても……」

 それを聞いた時、千紗子の体は勝手に動いた。

 彼女を囲う大きな体の中から勢いよく伸びあがり、雨宮の唇に自分の唇を重ねた。

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