Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
ぴたり。一彰の動きが停止した。
(い、今よっ!)
「私、ちゃんと話したいことがあるのっ!!」
次また口を塞がれてしまったら、もう彼を止めきれる気がしない。
千紗子は逸る心のまま、言葉を続けた。
「裕也とは、前の恋人とはきちんとお別れしました。今度はちゃんと自分の気持ちをはっきり伝えることが出来たの……一彰さんがいつも私のことを励ましてくれたからから……ありがとう。」
一彰が、ハッと息を飲んだ。
「千紗子……もしかして、あのときか?」
一彰の問いに、千紗子は一度だけ頷く。
「そうか…俺はてっきり……」
一彰はそれだけ呟くと、少しの間考え込んでいた。
「ガラス越しに見えた店内に、千紗子の後姿が見えたような気がして立ち止まったんだ。そしたら、あの彼が君を抱きしめた。だから……」
千紗子は、自分と裕也のことを一彰が誤解した理由がやっと分かった。
「だから、あそこから居なくなったんですか?」
「ああ。俺はあのまま君と彼を見ていることが出来なかった…本当は店に飛び込んで君を奪い去りたい衝動を抑え切れそうになかったから……」
一彰の言葉を聞いた瞬間、千紗子の体が大きく震え、体の奥からなにか熱いものがあふれだした。