Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「一彰さんのものになる前に、一つだけ教えてください。」
真剣な目を向けてきた千紗子に、一彰は目を丸くする。
千紗子は、ごくん、と一度唾を飲みこんでから、大きく息を吸った。
「一彰さんに、他にお付き合いしている女性はいませんか?」
「はっ!?」
一彰が目を白黒させた。けれど千紗子が言っていることを理解した瞬間、一彰の眉が跳ねがった。
「どういうこと?俺が千紗子と誰かを二股してるって、疑ってるのか?」
硬く低い声が千紗子の耳に届く。
千紗子とて、彼のことを疑いたいわけではない。ただ、あの時見た女性のことを忘れられないだけなのだ。
「……一彰さんが私に嘘をつくなんて、思ってません。ただ……」
「ただ?どうした千紗子?気になることがあるならちゃんと言って。」
「昨日の朝、うちの前を一彰さんが女性と一緒に歩いているのを見て……すごく綺麗な人で…一彰さん、楽しそうだったから……」
千紗子の声はだんだんと尻すぼみになって、最後の方は聞こえるか聞こえないか分からないくらいだった。