Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
雨宮は何も言わない。
俯いていた千紗子は、だんだんと不安になってきた。
(何も言ってくれない……ってことは、本当にあの人は…)
そんなことはないはず、と思っているのに、目の前の本人が否定しないせいで、千紗子の思考がどんどんと悪い方に傾いて行く。
(やだ………)
じわじわと瞼が熱を持ち始める。千紗子は泣きだすのを堪える為に、唇をグッと噛みしめた。
「噛むな、傷になる。」
声と共にそっと唇を指でなぞられて、千紗子が顔をあげると、困ったように眉を下げて微笑む一彰がいた。
彼は、痛そうな、それでいて嬉しそうな、泣き出す一歩手前のような、そんな顔をしている。
「一彰さん…?」
もしかしたらまた知らないうちに彼を傷つけたのかもしれない。そう思った千紗子はじっとその瞳を覗き込んだ。