Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「ごめん、千紗子。」
一彰の第一声に、千紗子は目の前が真っ暗になった。
(やだ……、嘘。)
瞳に涙が一気に集まって来て、今にも泣きだしそうになる。
そんな千紗子を一彰は思い切り強く抱きしめた。
「嬉しすぎて、泣きそうだ。そんなに俺を喜ばせて、どうしたいの?千紗子。」
(え?)
一彰が何を言っているのか、さっぱり分からない。
今まさに振られてしまうと思っていた千紗子は、大きく目を見開く。その目から一粒の涙がこぼれ落ちた。
そのこぼれ落ちた涙を指で優しくすくい取ってから、一彰はゆっくりと口を開いた。
「妹だ。」
「え?」
「ちぃが見たのは俺の妹。出張先があいつの仕事先とかぶって、出張帰りに着いて来たんだ。一泊した翌朝にすぐにまた仕事だっていうから、駅まで送って行ったんだよ。」
「……そうだったんですね……ごめんなさい……勘違いして疑ってしまって……」
よく確かめもせずに彼のことを少しでも疑った自分が恥ずかしくて、千紗子は項垂れた。
「分かってくれたならいい。」
そう応える声はどこか浮かれている。
(もっと怒ってもいいのに、どうして一彰さんはそんなに嬉しそうなの?しかもさっき『嬉しすぎる』って……?)
頭の中に疑問が溢れて考え込んでいる千紗子に、一彰がクスクスと笑う。
「ちぃ。またいつもの癖が出てるぞ。」
「えっ?」
「ちゃんと言葉にして?」
フッと息を吐くように笑いながら言う彼の声が千紗子の心を柔らかく包む。
「ごめんなさい…どうして一彰さんはそんなに嬉しそうなのかな、って気になったんです。」
申し訳なさそうに眉を下げながら上目遣いに見上げてくる千紗子に、一彰は微苦笑を浮かべると、彼女の眉間にリップ音を立てて口づけた。