Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「大丈夫か?」
「すっかり元気なんで、あんまり心配しないでください。」
車のシートに乗った途端降ってきた一彰の問いかけに、千紗子はにっこりと笑顔を作る。
実は、二人がお互いの気持ちを通じあわせたあの夜、千紗子は一彰の腕に抱かれて熱を出したのだ。
雨に濡れて体が冷えたせいというよりも、張りつめていた緊張が緩むと同時に、それまでの複雑な感情の起伏、寝不足からくる疲れなどが、ここに来てどっと千紗子の体に押し寄せたせいだろう。
自分の体の下に閉じ込めている千紗子が、驚くほど熱いことに気付いた一彰は、すぐさま乱れていた彼女の服を整え布団をきちんと掛け直すと、千紗子に「少しだけ待ってて」と言い残し、半乾きの服を着直して、どこかへ行ってしまったのだ。
朦朧としたまま一彰をベッドの中から見送った千紗子は、そのままあっという間に意識を手放した。そして次に目を覚ました時、そこは自分のベッドの上ではなかったのだ。
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『目が覚めたのか?』
『えっ!ここは……』
『俺の家だ。痛いところや辛いところはないか?』
寝起きの千紗子には彼の質問に答えることが出来ず、ただ呆然と自分の状況を理解するのに精いっぱいだ。
『私、いったいどうして……』
体を起こした時にズキンと頭が痛み、反射的に顔をしかめると、ベッドサイドに腰かけていた一彰が千紗子の額にそっと手を当てた。