Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
翌日には微熱に下がっていたものの、心配した一彰にもう一日休養するように強く言い含められ、千紗子はその言葉に従うことにしたのだ。
一彰は、熱を出した千紗子のことを、驚くほど甲斐甲斐しく世話をした。
熱で朦朧としている千紗子に食事を運ぶのはもちろん、ベッドサイドの飲み物は切れることすらなく、更には汗をかいた千紗子の体を濡れたタオルで綺麗に拭いて新しいパジャマに着替えさせる、ということまで当然のようにやってのけた。
そして夜には千紗子の体を優しく抱き寄せ軽い口づけを落とした後、『愛してる』と囁いて眠る。
弱り切った体だけでなく、心も同時に満たされる。そんな休養を過ごした千紗子が、回復しないわけはない。
一彰の献身的な世話のお陰で熱を下げることが出来た千紗子は、そんな彼の心配を無下に突っぱねることが出来なかったのだ。
しかも千紗子の上司でもある彼が『休め』と言うのに、どうやって断ることが出来ただろう…。
無理して出勤しようものなら、先回りして欠席届を出されそうな勢いに押された、というのも事実ではあるけれど。
そうこうして、二日ほどの休養を経てすっかり平熱に戻った昨日。
久々に出勤は以前のように一彰の車で一緒に行った上に、帰りも車で一緒に帰ることとなった。
とにかくこの数日間、千紗子はたっぷりと一彰の甘やかし攻めを受け続け、以前よりも彼の甘さに慣らされつつある。
けれど彼が千紗子を甘やかせば甘やかすだけ、千紗子は心の隅から漠然とした不安が、じわりじわりと侵食してくるような気がしていた。