Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
ちらりと一瞬だけ千紗子を見た一彰は、すぐに目を逸らす。そして更なる爆弾を投下した。
「本当は河崎にも何度か妬いた。」
「えっ!?」
流石の千紗子も今度ばかりは驚きの声を上げる。
(だって、美香さんは女性でしょ!?)
大きな瞳を更に大きく見張って、一彰を凝視すると、そっぽを向いた彼の耳が真っ赤になっているのに気付く。
「はぁ~~、俺はいったいどうしてこんなことをカミングアウトしてるんだ……」
情けなさそうに呟いた一彰に、千紗子の胸がキュンと音を立てた。
仕事中はクールな上司が、こんな風に耳を赤くして、自分の嫉妬心と独占欲を千紗子にさらけ出している。
想像もつかなかった彼の姿が、今、目の前にある。
言いづらいことを一彰が敢えて口にするのは、千紗子がいつまでもグズグズと前の失敗を引きずって怖がっているからだ。
そんな千紗子に、一彰は自分の醜態を晒してまで、彼女を安心させようとしているのだ。
(っっ、私、なんでそんなに怖がっていたのだろう……これからは出来るだけ自分の気持ちを口にするって、決めたばかりじゃないっ。)
長い間ずっとしてきたことは、一朝一夕では治らない。けれど少しずつでも変えていくことはできるはずだ。
決意を固めるた千紗子は、すぐ目の前の大きな体に自分の両腕を回して、ギュッと力を込めた。