Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「あら、千紗ちゃんはそう思わなかったの?」
「えっ?私ですか??」
びっくりしながら美香を見ると、「あんなに素敵な男性だって知ってたら私もチームに淹れて貰うんだったわ。」とブツブツ言っている。
(確かに素敵な方だったけど、それは作家さんとして人として、っていうだけで、男性としてなら……)
「ああ、そっか。千紗ちゃんは四六時中雨宮さんと一緒だから、イケメン慣れしてるもんね。」
耳元でそう囁いた美香の声に、ハッとしてそちらを振り向いた。
思いもよらぬ美香の発言に、千紗子の心臓が早鐘を打つ。
一彰と正式に付き合い始めた千紗子は、一週間以上経った今も、その関係を誰にも言うことが出来ないでいた。
もちろん目の前の美香にも、だ。
黙ったまま自分を凝視している千紗子の姿に、美香は「はぁ~っ」と深いため息をつくと、千紗子に顔を寄せてから、小声でコソコソと話し始めた。
「ちょっと前に千紗ちゃんが変な視線が気になるって言ってたでしょ?そのあとから千紗ちゃんの顔色が日に日に悪くなっていくから、私も気になってて…。それで雨宮さんが出張から戻ってきて、職場で会った時にちょっと相談したのよ。そしたら……雨宮さん、なんて言ったと思う?」
美香のアーモンド形の瞳が大きくなり、黒目がキラキラと輝きだす。
「えっと……、なんでしょう……」
戸惑う千紗子がそう答えると、美香は大きく開いていた瞳を今度は三日月のように細めて、ニヤリと笑った。
「『そのことならもう大丈夫。これからは千紗子は俺が守るから。』っっだって~~~!!」