Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
千紗子は一瞬で全身に火がついたように熱くなった。同時に背中に冷や汗が噴き出してくる。
美香はつい大きくなってしまった語尾に、慌ててその口元を手で押さえていた。
クリスマスイブの夕方のせいか、図書館には人もまばらで、今二人がいる児童書のコーナーには幼児連れの親子が一組いるだけだ。
けれど、同僚に聞かれては不味いと思ったのか、美香はそれとなく千紗子を書架と書架に挟まれた通路の端まで誘導した。
「誰にも言ってないわよ。っていうか、黙ってるなんて水臭いわよ、千紗ちゃん。」
「……すみません。」
「まあいいわ。だって相手があの人じゃ、なんとなく言い出せなかったのも分かるもの。いくら私が恋人一筋だって知っててもね。」
「……ありがとうございます、美香さん。」
「それに、その彼にも頼まれたしね。」
「え?」
「『職場では秘密にしたいと千紗子は言うけど、河崎には千紗子の味方でいてほしい。』だって。ふふっ、愛されてるのね、千紗ちゃん。」
耳打ちされた言葉に、千紗子の顔は更に熱くなり、もう美香の方を見れなくなってしまう。