Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
ブッシュドノエルを味わったあと、温かい紅茶を飲みながら、千紗子は窓の外の景色を眺めていた。
厨房からは人の気配が消え、この家には一彰と千紗子の二人きりだ。
静寂の中に、時折ストーブの中で薪の爆ぜる音が聞こえる。
窓の外ではクリスマスツリーが、変わらずキラキラと輝いている。
部屋に満ちる静寂が心地良い。
クリスマスミュージックなど無いけれど、今、この空間が、一番聖夜らしいのではないか、と千紗子は感じていた。
一彰も同じように感じているのか、食事の時とは違って、黙ったまま外を眺めながらコーヒーを飲んでいる。
うっとりとクリスマスツリーを見ていた千紗子は、カップの中身が既に空になっていることに気付き、ソーサーの上に戻した。
(そうだ、渡すなら今だわ。)
「一彰さん。」
「ん?」
千紗子に呼ばれた一彰が振り向くと、鞄を膝の上に乗せた千紗子が、その中から何かを取り出そうとしていた。
「あの…これ。」
千紗子が差し出した手には、細長い箱が乗っている。
深い緑色の包装紙で包まれ、金色のリボンが掛けられたそれを一彰に差し出す千紗子は、頬を赤く染め、一旦伏せた瞳を持ち上げて一彰を見つめると、口を開いた。
「クリスマスプレゼント、受け取ってもらえますか?」
狙ったわけではない上目使いの瞳に見上げられた一彰は、大きく目を見開き、千紗子を見つめ返した。