Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「あっ、ゆきっ!雪ですよ、一彰さんっ!」
静寂の中、突然千紗子が声を上げ、立ち上がって窓に駆け寄るのを、一彰は目を丸くして見送る。
ついさっきまで大人しく自分の膝の上で身を委ねていた千紗子が、窓辺ではしゃいだ声を上げているのを見て、一彰はクスクスと笑い出した。
「一彰さん?」
軽く握った片手を口元に当て、もう片手でお腹を押さえた彼が、心底楽しそうに笑っている。
千紗子は自分が取った行動が彼をそうさせていることに気付き、途端に恥ずかしくなってしまった。
「……ごめんなさい、こどもっぽかったですよね…」
顔を赤らめる千紗子に、席を立った一彰がゆっくりと歩み寄ってきた。
「そんな意外な一面も、可愛いよ、ちぃ。」
窓ガラスに片手を着き、反対の手をそっと千紗子の頬に当てると、一彰はにっこりと笑う。
甘い瞳と甘い言葉に、千紗子の顔はみるみる赤く染まっていく。
「それよりも、四回目。」
「え?」
「敬語、もう四回目だぞ。ペナルティ、覚えてるよな?」
口の端を少し持ち上げて笑う一彰の目に、少しだけ意地悪そうな光が宿る。
「えっと……あれって、本気だった、の??」
「もちろんだ。」
一彰は、自分の体と窓ガラスの間に閉じ込めた千紗子に、腰を屈ませ顔を近付けると、「さあどうぞ」と言わんばかりに、瞳を閉じる。
千紗子はドキドキと早まる鼓動に、手を胸の前で握った。