Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
じっと自分を見上げる瞳が、少しだけ潤んでいる。
一彰はそっとその目元に唇を寄せた。
「ごめん。心配させてしまっていたんだな…。」
瞼に落とした唇をそっと離すと、千紗子は睫毛を震わせて瞳を開き、小さくかぶりを振った。
千紗子の頭を数度撫で、サラサラと絹のような手触りを確かめると、一彰は背中から腰に降りた手で、彼女の細い腰を抱き寄せた。
「異動の内示が出たんだ。」
一彰の体の上で、千紗子がハッと息を飲むのが伝わってきた。
「まだ内示だから正式な辞令は今週末になる。中々言い出せなくて、すまない。」
千紗子が一彰のシャツをきゅっと握り、大きく左右に首を振る。その顔は伏せられていて、千紗子がどんな表情をしているのか見えない。けれど、一彰には、彼女の顔が見えなくても分かっていた。
「泣かないで、千紗子。異動といっても、すぐ隣の分館だ。」
宥めるように背中を撫でると、その小さな肩が微かに震えているのが分かる。
「千紗子……。」
腕の中の彼女が、たまらなく愛おしくなって、小さな体をきゅっと抱きしめた。