Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
千紗子を囲う腕に力を込め、自分の体に押し付けると、うなじから鎖骨に向けて、舌でなぞる。
「んんっ、はぁっ、」
その小さな口を少しだけ開けて、我慢できずに漏らした吐息交じりの声が、艶やかなほど色っぽい。
頬を赤く染め瞳を閉じている千紗子は、その姿を逃さず見つめる瞳に気付くことはない。
無自覚な千紗子に煽られた一彰は、ふつふつと沸き上がる黒い欲望を抑えることが出来なくなった。
目の前にある首筋に、軽く歯を立てると、力強く吸いついた。
「んっ、やぁっ…か、一彰さんっ!」
一彰が何をしようとしているのか察した千紗子が、慌てて腕で一彰の胸を押し返すが、一彰の腕はびくともしない。
薄っすらと桃色に染まる肌に、赤い花びらが散る。
一彰は満足げに、付けた赤い痕を上からペロリと舐めた。
「一彰さんっ」
咎めるように名前を呼ばれて、目を上げると、潤んだ瞳が自分を睨んでいる。
(そんなふうに睨んでも、煽っているようにしかみえないな。)
クスリ、と笑いを漏らすと、千紗子の眉がみるみる上がっていった。
「なっ!怒ってるんだけど、私……」
「そうだな。」
「あんなに、見えるところに付けないでって、お願いしてたのに……。」
膨らませた頬は赤く、一彰を見上げる瞳は朝露に濡れた花のようにキラキラと輝いている。
そんな姿が一彰をただ煽っているだけだということに、千紗子本人はまったく気付く気配はない。
「ごめんな?」
「~~~っ!」
少しだけ首をかしげて謝ると、なぜか声もなく憤慨された。
プイッと横を向いた頬が赤くて、それすらも今の一彰には美味しそうな果実にしか見えず、そこに音を立てて口づけると、もう一度謝罪の言葉を口にする。
「ごめん。そんなに怒らないで、ちぃ。」
本当に悪いと思っているのか、と問われると正直困るが、千紗子にそっぽを向かれたままなのは辛い。
彼女の横顔を見つめながら、こちらを向いてくれるのを黙ったままじっと待った。