Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
付き合い始めて三か月。千紗子は日に日に美しくなっていく。
これまでも、真面目な新人司書として同僚たちからの信頼はあったが、基本的に口数が少なく感情をあまり表に出さない彼女のことは、周囲の男性には地味に映るのか、千紗子個人に興味を持つ人はほぼいなかった。
しかしここ最近、彼女のことを口にする同僚の男性たちを、一彰はよく見かけるようになっていた。
彼らの会話は、どれも彼女に対して好意的なもので、業務のことだけでなく彼女自身の魅力を褒めるものもあった。
その会話に一彰が参加することはないけれど、内心面白くないことは確かだ。
これまで、自分の主張を声に出してすることがなかった千紗子が、少しずつ自分の考えや気持ちを表に出すようになったのは、純粋に良いことだと思う。
本来優しく、他人を傷付けないように気を遣う彼女だから、自己主張といっても、些細なものばかりだ。
そんな彼女の持つ美徳に、周りの男性が気付かないわけはない。
しかも千紗子が変わったのは、内面だけでなく外見もだった。
一彰がクリスマスに贈ったワンピースをきっかけに、千紗子はすこしずつそれまでとは違う明るい洋服にも挑戦するようになってきた。
元来真面目で勉強熱心な彼女は、ファッション雑誌などを読んで、着こなしなどを研究したようで、前に比べると垢抜けた装いをに身をするようになった。
着るものの研究と同時にしたのか、化粧も少しだけ明るくなった。とはいえ、薄化粧であることに変わりはないけれど、自分にあったスタイルというものを少しずつ覚えているようだ。
さなぎが蝶に変わるように、美しく、そして強くなっていく。
千紗子本人はまったく気付いていないが、そんな彼女のことを司書としてだけでなく、異性として見る利用者もいることに、一彰は気が付いていた。
彼女に、目を奪われるのは自分だけでいいのに。
千紗子を他の男が見る度に、一彰は腹の底から湧き起こるどす黒い嫉妬を抱え、どうしようもないほど彼女を独占したい気持ちに襲われるのだ。
そしてその気持ちが煮詰まると、こんなふうに彼女に所有印を押してしまうのだ。