Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 そんなふうに、これまでは『来る者拒まず去る者追わず』な恋愛スタイルを繰り返していた一彰にとって、千紗子へ抱く気持ちは初めてのものばかりで、自分でも戸惑うことがある。

 愛しい。守りたい。大事にしたい。
 そんな気持ちと並行して、常に心の底にあるのは、『千紗子のすべてを自分のものにしたい』という強い独占欲だ。 

 (俺は自分で思っていたよりも、ずいぶん重い男だったんだな。千紗子が知ったらどう思うのか…。)



 「一彰さん……?」

 控えめな呼びかけに、一彰は思考の淵から意識を戻す。
 すぐ目の前に、窺うように覗き込む大きな瞳があった。

 彼女の様子は、さっきまでの怒っていたものではなく、不安げな顔で瞳を揺らしている。

 「ちぃ、どうした?もう怒ってないのか?」

 「ううん…、一彰さんの方こそ、怒ってないの?」

 「俺が?どうして??」

 「どうしてって…ずっと黙ってるから……。私があんまりわがままだから、怒ったのかと思って……」

 「千紗子がわがまま?」

 一彰は目を丸くする。

 「千紗子がいつわがままを言ったんだ?可愛いお願いなら耳にしたことはあるけど、それだって滅多に聞けないし。むしろわがままなのは俺の方だろ?」

 一彰の返答に、今度は千紗子が目を丸くする番だ。
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