Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 「いただきます。」

 千紗子が手に取ったのはシンプルなレーズンパン。
 一口齧ると、口の中に小麦の甘みとふんわりとした触感で癖がなく、とても食べやすい。

 「おいしい…」

 「良かった。」

 千紗子口から漏れた素直な呟きに、雨宮は目を細めて嬉しげに笑う。
 職場で見るクールな姿とは全く違う彼の姿に、千紗子は目をしばたかせる。

 (これが素の雨宮さんなの?)

 「ん?どうした?遠慮なくどんどん食べろ。」

 本当は胸が塞いでこれ以上食べる気にはなれなかったけれど、雨宮にそう言われて残すわけにもいかなくなった千紗子は、食べかけのレーズンパンをコーヒーと一緒に何とかお腹の中に収めたのだった。

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