Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
‟ドクンッ”
床に散らばる衣服。
ソファーの背越しの裸の恋人。
薄っすらと顔を歪めて笑う女の赤い唇。
誰もいないリビングの風景に、昨日の映像が重なる。
千紗子の足元がふらり揺れて、胃の中から熱いものが込み上げた。
弾かれたようにすぐ近くのドアを開けてそこに飛び込む。
ガタン、とドアが壁にぶつかって激しい音を立てたが、そんなことには構わず、千紗子は洗面台に突っ伏して、胃の中のものを全て吐きだした。
「千紗子っ!!」
物音を聞きつけた雨宮が、廊下を駆け上がってくる。
「どうした!?」
洗面台で苦しげに吐いている千紗子を見付けた彼は、すぐさま千紗子に駆け寄ってその背に手を当てる。
千紗子は雨宮が来たことに気付いたけれど、次々に込み上げる吐き気に、声を出すことすら出来ない。
そんな彼女の背を雨宮は何も言わずにずっとさすり続けた。