命の記憶
「おーい、こーすけー?」


 少し離れたところで彼の友達が彼を呼んでいた。


「えーっと、ごめん、行くね?」


 それだけ残して彼は友達の元に行ってしまった。


 彼が友達と笑っている。


 その姿から目が離せなかった。


「ほんっとごめん!」


 周りの人がびっくりするくらいの声で桃子が謝ってきた。


「まさか同姓同名の別人だったなんて……私……」


 あの後桃子が私にタピオカドリンクを奢ってくれ、今はその教室の中にいる。


「ううん、大丈夫だよ。それに、別人じゃない。あれは絶対私の知ってるこうちゃんだよ」


 そう。それは間違いない。


 どんなに声が変わっていても、昔よりも背が伸びていても、あの笑顔だけは何も変わっていなかった。
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