命の記憶
 私は目の前のものをそっと両手で握りしめる。


 なんだか手の痛みが和らいだ気がした。


 私が飲み物を受け取ったことを確認したこうちゃんは、私と少し間をあけてベンチに座った。


 2人で同じりんごジュースを飲む。


 それからこうちゃんがぽつぽつと、なんでもないような話を始めた。


 少しの休憩だったはずが、気づけば学校の話やお家の話など、時間を忘れて話していた。


「そろそろやろうか」


 そう言われた時にはもうすっかり日が傾いていた。


「がんばれー!」


 こうちゃんが近くで見守ってくれている。


 たくさんアドバイスももらったし、きっとできる。


 鉄棒をぎゅっと握った手からじんわりと冷たさを感じる。


 もう一度鉄棒を握り直してから、勇気を振り絞って思いっきり足を上げた。
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