命の記憶
 今までにない感覚と景色。


 気がついた時には一回転して地面に着地していた。


「わぁ! で、できた……!」


 満面の笑みでこうちゃんを見ると、こうちゃんは自分のことのようにすごく喜んでくれた。


「すげぇ! 今のめっちゃ綺麗だった!」


「ありがとう! こうちゃんのおかげだよ!」


 両手を上げてハイタッチをする。


「いたっ……」


 私はすっかり手の豆のことを忘れていた。


「ご、ごめん!」


 びっくりしたこうちゃんが慌てて謝ってきた。


「大丈夫だよ」


 そうは言いつつも意識したせいか、痛みを感じ始めた。


「ど、ど、どうしよう……」


 こうちゃんが私の手を見てソワソワと動き出した。


「ことね? 何かあったの?」


 思わぬ方向から聞こえてきた声は、仕事を終えてきたお母さんだった。
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