命の記憶
こうちゃんとの別れ
 体育の授業までに手の豆も少し良くなり、私は逆上がりを成功させることができた。


「次お母さんのところ行った時、こうちゃんに報告しなきゃ!」


 そしてその次の土曜日、私はいつものようにお母さんの家に行き、そこから公園に向かう。


 そこには先週逆上がりを教えてくれた少年が──


「こうちゃん!」


 私は走りながらその名を呼んだ。


「おお、ことね!」


 こうちゃんも私に気づいて名前を呼んでくれる。


 私の名前を覚えていてくれた。


 ただそれだけで胸の奥底から嬉しさがぐーっと込み上げてきた。


「こうちゃんその子だれ?」


 こうちゃんの近くにいた知らない男の子が言う。


 よく見れば男の子と女の子が何人かいて、こうちゃんはその子たちと遊んでいたようだ。


 そっか、2人きりじゃないんだ──
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