命の記憶
 仕事中なので返事は期待していない。

 私はすぐに携帯をしまった。

「おじゃましまーす」

 こうちゃんが靴を綺麗に揃えて部屋に入った。

 ここは週に1度しかこないお母さんの家なのに、まるで自分の部屋に招き入れたような気になり、緊張してきた。

 本当に自分の部屋に招き入れる時は事前に掃除するんだろうな。

 おじいちゃんおばあちゃんの家にある自分の部屋を思い浮かべながらそう考えた。

「あれ、これ学校の宿題?」

「え? あ……」

 しまった。

 学校の宿題を机の上に広げたまま公園に行ってしまい、その事をすっかり忘れていた。

 こうちゃんが近くによって私の宿題を見ている。

 間違ってるところとか、字が汚いとか、大丈夫かな。

「やっぱ学校は違ってもやってる範囲は同じなんだな」
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