命の記憶
 まさか本当に会えると思って相談したわけではなかった。


 彼と同じ名前の人が桃子の高校に。


 その言葉が頭の中で繰り返し流れて止まらない。


「その日の予定とか後で連絡するよ。とりあえずこれ、文化祭のパンフレットね」


 そう言ってカバンからパンフレットを取り出すと今度は桃子の方が身の回りの整理を始めた。


 今度こそ帰るみたいだ。


 私も慌てて片付けを再開した。


 やっと会える。


 3年半も待ったんだ。


 私は友達との別れ際だというのに、きっと来た時よりもニコニコしているだろう。


 カフェの前で桃子と別れ、私は1人、この街を歩く。


 やっと彼に会える。


 それだけで胸がいっぱいになった。
< 3 / 45 >

この作品をシェア

pagetop