命の記憶
 その後は黙々と2人で宿題を進めた。

 1時間ほどで私の宿題も無事に終わり、こうちゃんもそろそろお母さんが帰ってくる頃だと言うのでここまでだ。

 せっかく久々にこうちゃんに会えたというのに。

 もっと長く一緒にいたいという願いは届かないものなのか。

 とはいえ、こうちゃんにまだ一緒にいようと言える勇気もないので仕方ない。

「じゃあ、またね」

 私はこうちゃんをマンションの出口まで送った。

「ああ、また」

 こうちゃんが軽く手を振ってから背を向けて歩き出す。

 私はこうちゃんが見えなくなるまで見送ったが、こうちゃんは1度も振り返ることはなかった。

 それからしばらくしてお母さんが帰ってきたが、こうちゃんを家に入れたことについて、特に聞かれることは無かった。

 次の日には何事もなく元の家に戻った。

「ふぅー……」

 お風呂をあがり、髪の毛を乾かし終わったあとでベッドに倒れ込む。
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