命の記憶
「連絡先?」

 どうしよう、引かれていないかな……

「ほら、これで知り合いってことで!
私は人違いしてないーみたいな……あはは、そんなわけ、ないですよね……」

 言い訳がどんどん苦しくなってきて苦笑いで最後の方をごまかす。

 もっと変な人だと思われている……

 どうにも出来なくなり、りんごジュースをギュッと握った。

「くっ……なにそれっ、変なの……」

 こうちゃんが思わず笑っている。

 予想と違う反応で一瞬戸惑ったが、笑ってくれたならよかった。

 やっぱり笑顔も昔と変わっていない。

 私の知っている、大好きなこうちゃんのままだった。

「連絡先、交換しよう」

 まだ笑いが治らないこうちゃんが、そう言いながら携帯を出した。

 私を忘れてしまったのは悲しいが、もしかしたら思い出してくれるかもしれないし、思い出せなくても、新しい思い出をまた作ればいい。

 あんなに不安いっぱいだったのに、最後はこうちゃんのおかげで気楽にいこうと思えるようになった。
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