俺たちは夜に舞う蝶らしい
Prolog
「た‥‥助けてくれっ!
金なら払うっ!掲示した倍でどうだ!?
すまない!もうしないから!!」
「一度裏切ったやつをもう一度信じる気なんてないよ。
まあ、その心に免じて‥‥‥‥」
必死に命乞いをする男に、綺麗な笑顔で手に持った長剣を無情にも振り下ろす姿が見えたと同時に鮮明な赤が飛ぶ。
『苦しまずにいかせてあげる。』
そんな彼の言葉は男には届かない。
届いていたとしても聞こえてはいないだろう。
その場を立ち去ろうとした彼がふと何かを思い出したようにその場に立ち止まりもう聞くことができない男に向かって言葉を発する。
「家族がいるのに馬鹿なことするよね。
そういう馬鹿が何をするか見てみたかったんだけど、裏切る相手を間違えたね。
あんたは見る目がなかったんだ。
安心しなよ。
家族には‥‥‥‥」
そこで言葉を一旦区切り止めていた足を動かし出す彼。
『バレないように細工しといてあげる』
部屋から出るその時に微かに響いた言葉は、暖かく寂しい声色だった。
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