俺たちは夜に舞う蝶らしい
ケラケラと、そして父親らしい顔で笑う夕は尖ってた昔とは違って、年月を感じる。
変わらないのは俺らの関係と、中身だけか。
「夕さん、澪におめでとうと言っといてください。」
「おー、了解。
お前からの伝言、喜ぶだろうよ。」
『澪、蘭音-ranne-のこと大好きだもんな。』
「父親の俺により懐くってどーよ。」
肩を落とす夕を見て笑う蘭音。
蘭音は凜音の双子の弟。
こいつはここで高校生にも関わらずBARを経営している。
クスクスと笑いながらもグラスを片付ける蘭音。
刺々しい凜音とは違い、物腰柔らかでどちらかといえばふわふわしている蘭音に澪は懐いている。
なんせインドア派の澪が〝蘭音に会える〟と言えばさらっと家から出るほどだ。
「澪はちゃんと夕さんのことも好きですから。」
ニコニコしそう言いながら奥に置いてあった夕のカバンを渡す蘭音に、夕は複雑そうに笑って受け取る。
「分かってるけど、淋しいじゃねぇか。」
『大の大人が何言ってんだ。』
「うっせぇ。」
「早く帰ってあげないと澪が可愛そうですよ。
夕さん、嫌われないうちに帰った方がいいんじゃないですか?」
「やべっ、じゃあ行くわ!」
「ありがとうございました。
またのお越しをお待ちしてます」
『澪によろしくなー』