俺たちは夜に舞う蝶らしい
『隠し事ねぇ。』
「蘭ちゃんも知ってるでしょ。」
『まあ、知ってるよ。
けど、澪が気にすることじゃない。』
「[教える気はないんだねー]」
自分が当事者だってなんとなく気がついてるだろう澪。
それでも、電話の向こうではいつもと変わらす笑っているんだろう。
「[いつもそう。皆が辛い時に僕らは何もできないの。]」
『そんなことないよ。
澪たちが笑ってくれてるから俺たちは頑張れる。』
「[皆おなじこというー
‥‥翼のお父さん、そこにいるでしょ?]」
明るい声から一変、少しくらい声色になる澪。
昭美さんがいる事を認めると伝言を頼まれた。
その伝言は澪らしくて、子どもらしくないものだったけど、自分より他人を心配するところが‥‥‥‥
「[じゃあね。
明日は来てくれるでしょっ?]」
『…うん。行くよ。
ちゃんとプレゼント持ってくからね』
「[うんっ。楽しみにしてる!]」
嬉しそうな声とともに切られた電話。
「澪なんて?」
『〝危ないことしちゃダメだよ。
僕らなら大丈夫だから。〟』
「は?」
『澪からの伝言です。
何か感づいてるのかもしれませんね。』
「恐ろしいガキだなぁ。」
クスクスと笑う昭美さん。
そろそろ帰らねぇとな。と立ち上がる昭美さんはどこか色々吹っ切れたみたい。
『またのお越しをお待ちしてます。
お気を付けて。』
「全部片付いたら来る。
いい酒用意しといてくれ。」
『‥‥はい。』
昭美さん。
どうかご無事で。
俺は去っていく大きくも小さな背中をただ黙って見つめていた。