俺たちは夜に舞う蝶らしい
家を出て神月家への道を歩きながら、再び思い出す。
抗争が終わったと組に連絡があったのは、とっくの昔に日付が変わったというタイミング。
次の日は休日だったが、普通の子どもは寝る時間だろうにソファの上で体育座りをして起きている澪。
普段澪が泊まりに来たときなら組員の誰かが寝るように急かす筈なのに誰も澪が起きていることを咎めなかった。
むしろ、起きていることが普通といったように。
連絡からしばらくたった頃、組員が帰ってきた。
帰ってきた組員も澪が起きていることに誰も突っ込まないし、それどころか、頭を撫でていく組員もいたくらい。
大きな怪我をしている人もいるが、怪我をしている組員こそ澪と少し話したり頭を撫でたりしていた。
最後に洋さんと夕さんが帰ってきて、部屋に入ってきた。
二人は当たり前のように澪に「何人?」と問いかけると澪もまた当たり前のように「53人、19人」と答えた。
その答えを聞くと、大きく頷いた二人は組員に「全員無事だ!怪我をしているものは手当てをしてから、それ以外はすぐに休むように!」と声を張り上げる。
53人。
それは、抗争にでた人数で帰ってきた人数。
19人。
それはかすり傷を含む怪我をしていた人数。
澪はそれを全て把握していた。
そして、綺麗な笑顔でお帰りと言うと、そのままポテンと音を立ててソファで寝てしまった。
聞けば、いつの間にか抗争に居合わせたときは行った人数と帰ってきた人数。
負傷者の人数を確認するようになっていたらしい。
だから、抗争はできるだけ次の日が休みの日にするようにしているのだとか。
ガキのためにと思ったがそれだけ人のことを見ていて、心が綺麗な澪。
誰もが愛し、見守る対象。