俺たちは夜に舞う蝶らしい
『それで、仕事というのは?』
「KINGの動向はどうなってる?
それを調べて欲しい。」
『それは、夕さんの方がいいのでは?』
「出てこなかったんだよ。」
夕さんは組の中でもトップクラスのハッカー。
俺に、ハッキングを教えてくれたのも夕さんだ。
犯罪?
んー、そうなんだけどね。
ま、良い子は真似するなってやつだよ。
‥‥っていうかさ。
『夕さんで無理なら、俺なんて不可能ですよ。』
俺に技術を教えた本人が無理なのに、弟子である俺が出来るわけねぇじゃん。
何考えてんのこの人。
「お前、俺より技術あるの気がついてねぇの?」
『へ?』
「俺は確かにお前にやり方は教えたがな。
基礎しか教えてねぇし、後はお前の我流だぞ?」
『え?』
「お前はもう俺より技術があるし、実力も上なんだよ。」
気づいてなかったのかよ。とおもしろそうに笑う夕さん。
自分より優れた能力だと他人を認めるのは、簡単なことじゃない。
俺なら認められないだろうし、認めたくない。
けど、夕さんは自分の立場や力量を把握した上で動く。
だからこそ、強いんだ。
力もだけど、心が。