俺たちは夜に舞う蝶らしい
俺たちの間には隠し事は少ない。
けど、少ない分お互いがお互いに隠していることは重く苦しくて、簡単に踏み入れることが出来ないもの。
それを知ってるから俺も蘭音も何も言わない。
母さんが裏の人間で、父さんも組…裏の人間。
俺は裏にいるのが当たり前で、それが普通だと思ってた。
その考えは今でも変わらない。
けど。
蘭音は母さんが死んだところを見てるし、裏のことに関わりたくなさそうだったから、こっちに来なくていいように気を使ってたはずだった。
なのに、いつの間にか情報屋という立場で裏に来てるし、下手したら始末屋でもおかしくない。
鈴の音は思い出。
母さんが歩くたび、軽快な音を立てていて。
母さんが止まるたび、静まり返って。
母さんが居なくなったら、聞けなくなった。
凛音。
名前の由来は母さんが持っていた心と鈴の音のように凛とした人であって欲しいってことらしい。
鈴と凛をかけているのだとか。
蘭音も似たような由来だったかな…。
「今日、ご飯どうする?」
『ん?あー、いらない。
もうちょっとしたら仕事。』
「そっか。気をつけてね」
そう言うと机の上にパソコンを広げる蘭音。
パソコンを起動させると、真剣に向き合い始めた蘭音は瞬きもほとんどせずに一心に画面を見ている。
何気なく画面をのぞき込んでみると、普通なら訳のわからない文字の羅列。