俺たちは夜に舞う蝶らしい



そう。

もともと、あの人はあの汚れのない子たちをこちらに引き込むつもりなんてないんだ。

あるのは、何万歩も譲って泣く泣く選んだ子どもを囮にし、王者の息の根を止めるという野心。

まあ、この世界にはそんな表現ないけど簡単に言えば下克上だ。



「そんなにすごいわけ?
その2人。」


『澪の方は敏感だね。
翼は最近会ってないから分からないけど。』



澪も翼も、裏で生きていけるかどうかはさておき、自分で決めたことは最後までやるだろう。

それが例え、何かの犠牲の上にたっていたものだとしても。




『ねぇ、凛音。』


「なに?」


『もしも、俺に何かあったら‥‥』


「は?何言って‥‥」


『黙って聞いてて。』




俺は澪も翼も大切なんだ。

それは夕さんの子どもだからとか、照美さんの子どもだからとか関係ない。

澪が澪で、翼が翼でそこにいるから大切なんだ。

暖かい雰囲気も、眩いほどの笑顔も、悲しげな表情も、苦しそうな声も、あの子達がそこで生きているから俺達は感じることが出来る。

俺達年上の人間は守らないといけない。

小さな命を。
小さな光の大きなぬくもりを。



< 38 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop