俺たちは夜に舞う蝶らしい




僅かなキーワードで、状況把握をしたんだろう父さんが聞いてくる。




『兄貴が〝ランクA〟って伝えろって。』


「それは本当だな?」


『あ‥‥あぁ。』




ランクA。

その意味は俺には分からない。

凛音さんも翼さんも分からなかったみたいだから、兄貴や蘭音さんに父さんたちが動いている仕事内容の隠語なんだろう。



「汐。」


『何?』


「零に出かけるって伝えといてくれ。」



風呂場から音が聞こえるから母さんは入浴してるんだろう。

父さんは仕事終わりのままくつろいでいたらしく、スーツの上着をひっつかむ。

スーツの胸ポケットには組の幹部メンバーである証が刺繍されていた。

いつ死ぬかわからない仕事の父さんだけど、いつだって堂々としていて誇りだった

翼さんの両親も裏の人間だったことを知った時は驚いたけど、仕事に向かう後ろ姿を見た時はかっこいいと思ったのをよく覚えている。


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